| 145-参-農林水産委員会-26号 1999年07月27日 ○佐藤昭郎君 おはようございます。自由民主党の佐藤昭郎でございます。 きょうはいよいよ農振法の改正についての審議ということで、今国会は食料・農業・農村基本法案を初めとして、十三本の法律のうち十二本の本審議が終わりまして、いよいよきょうこれから審議されます農振法が最後ということで、感無量のものがあるわけでございます。 新農業基本法に定められました理念、これをいろんな関連法律をつくって実施していくわけでございますが、私は前回の審議でも申し上げたんですけれども、今この理念を実行へ移していくには農家の方、消費者の方、そして行政また政治、これが連携しながら取り組んでいかなきゃいけない大事な時期だと思うんです。 冒頭、大臣の方に、この連携というものに対し冷水を浴びせるような事柄につきまして農水省のお考えを少し伺っておきたいと思います。 去る七月十日に発売されました文芸春秋の八月号、ここに石井紘基国会議員の名前でこんな記事が出ております。「私が見た「族議員」利権システム」という記事でございます。私もこれを読ませていただいたんですが、非常に読者をミスリードする事実誤認の記述が多数あるんです。 たくさんあるんですけれども、一つ申し上げますと、土地改良事業をやるときに三分の一の同意を集めれば事業が実施できまして負担金を徴収できる、これは実際は御案内のように最低三分の二、圃場整備のような面的な工事を実施する場合は一〇〇%の同意がなきゃほとんど無理でございます。あるいは都道府県土連が建設工事を請け負って建設業者に丸投げしているという、これも全然できないわけですね、やっていない。もう一つ申し上げますと、土地改良資金協会等が補助金を自由裁量していると、こういう記述でございました。 私は、これを読んだときに、余りにも多く事実と違う記述があるので関係者は一読されてもう意に介さないだろうと思っておったんです。ただ、先々週、地方に参りまして農業基本法の説明を関係者の方に申し上げた、あるいは私のところにも全国から陳情者の方が来られますけれども、その方々の話を聞きまして少し考えが変わったんです。皆さんがおっしゃるには、天下の文芸春秋が取り上げた、我々はわかるんだけれども、知らない読者の方々はこれは本当だと思ってしまう、ショックだと、こういうことでございます。 冒頭申し上げましたように、今、受益者の方、農家の方、消費者、国民全体が一体となって取り組んでいかなきゃいかぬときに、非常に問題な記事だと僕は思うんです。農林水産省として、これは大臣に、この記事をどのように受けとめられたか、この点を伺いたいと思います。 ○国務大臣(中川昭一君) おはようございます。よろしくお願いします。 今、佐藤先生の御質問の文芸春秋でございますが、すぐ私の手元に参りましたが、まず先生御指摘のように、同意が三分の一か三分の二かという基本的なことすら間違っておる記事でございますから、手元に置いたまま見るに値しないと私は思って、読んでおりません。 ただし、先生御指摘のように、新しい基本法のもとでこれから農業・農村そして食料政策を進めていく上で、農業農村整備事業について多大な事実誤認があるということ、しかも影響力のある雑誌でございますから、我が省といたしましては、出版社そして著者でございます石井議員に訂正を申し入れたところでございます。そういった基本的な事実誤認については一部御納得された、御了承されたというふうに思っておりますけれども、与える影響は非常に大きい、誤解を与えるわけでございますので、我々としては今後も必要な措置をとっていかなければならないというふうに思っております。 いずれにいたしましても、新しい基本法のもとでの農政の着実な推進、国民的な理解と信頼のもとでの推進に今後も一層邁進してまいりたいと考えております。 ○佐藤昭郎君 中川大臣の御答弁を大変力強く伺いました。こういう誤った記事に対する厳正な対応をお願いするとともに、今、大臣おっしゃいましたけれども、こういった記事に惑わされることなく、今惑わされていないというお話でございましたけれども、基本法に則した新政策をひとつ展開していただきたいと思います。 さて、農振法に関する御質問でございます。 この農振法を非常に大事な法律だというふうに僕は考えております。新基本法関連の最後の法律ということもございまして、全国の関係者の方々、特に土地に関係する方々は、新基本法に記述された理念が農地あるいは農村地域の土地利用の上に一体どのように具体化していくんだろうかというところに本当に関心があるわけです。ただ、中身について、どういうふうなものが具体的に変わってくるだろうかという点について情報が不足していると思いますので、その点を少し伺っていきたいと思います。 まず、第三条の二、「基本指針の作成」というのがございます。この第二項の第一号、二号で、農林水産大臣は、農用地の確保に関する基本的な方向、それから農業振興地域の指定の基準に関する事項、この二つを定めることになっております。 御案内のように、新農業基本法では、たしか第十五条でございますけれども、食料自給率の目標を明示する、その関係で自給率が決まってまいります。そして、国内の作付面積、農地の利用率が決まってまいりますと、自動的といいますか、ある意味では必要農地面積というのが出てくる。 この関係で、今回、農林水産省としては、確保に関する基本的な方向、ここを具体的にどのような形で定められようとしているのか、この点をわかりやすくひとつ御説明していただきたいと思います。 ○政府委員(渡辺好明君) 今、先生から御指摘がございましたように、基本法の中で基本計画を定め、そして自給率の目標を定めるわけでございます。その前提として、当然のことながら各種の農産物につきましてそれぞれ必要な作付面積、必要な農地面積というものを積み上げてくるわけでございます。その結果、基本計画の中では必要な農地の総量というものが出てまいりますが、その必要な農地の総量の中で、とりわけ優良農地として一体どれだけのものをどの地域で確保していくのかということが問題になります。 今回の農振法の改正によりまして、農林水産大臣が基本指針を策定することとなりました。その中で集団的な農地あるいは土地基盤整備が実施された農地、こういったものを優良農地として位置づけをいたしまして、この面積について、さらに農用地の確保をどういうふうに図っていくかということについて基本指針で明らかにしたいと思っております。 農業を振興すべき地域の指定の基準につきましても、これまで運用の中でいろいろと実績があるわけでございますけれども、これを法定化いたしましてきちんと位置づけをしていきたいというふうに考えておるわけでございます。 ○佐藤昭郎君 続いて、今の農地総量の確保について重大な変更がここでなされるわけですが、第四条関係に都道府県知事の定める基本方針がございます。第四条の二で、大臣が定めた基本指針に基づきまして、各都道府県知事が基本方針を定めていかれるわけですが、第四条第二項第一号に「農用地等の確保に関する事項」というのがございます。 そして、この点は総量を確保していく担保の関係だと僕は思うんですが、第五条に、農林水産大臣は必要があると認めたときには今の第二項第一号にかかわる事項については変更をするための必要な措置をとるべきことを指示することができる、これはいろいろ経済情勢やそのほかの状況で基本方針を変更する状況が生じたときには、この点に関してだけは大臣が指示をするという説明になっている。 これは先ほど局長の方から御説明ありましたけれども、平時の自給率あるいは不測の事態の食料安全保障の面から考えて、これだけの農地総量というのはやはり必要であると考えたときに、この連携で都道府県の定める基本方針も国がやはり相当程度関与していこうとしているのかといった点、この都道府県知事が定める「農用地等の確保に関する事項」の少し具体的な中身、そして国がどのようにここを担保していこうとしているのか、その点を伺いたいと思います。 ○政府委員(渡辺好明君) 今回の農振法の改正、もちろん一番重要なことは新しい基本法との関連において改正をさせていただきたいということでございますけれども、同時に地方分権ということも十分に頭に入れております。地方分権の議論を通じまして、食料の安定供給というのは国の責務であるということを地方分権委員会にも御納得をいただきました。 そういう点から、国としては、農林水産大臣が策定をする基本指針の中で、農地とりわけ優良農地の面積について示していきたいというふうに考えているわけでございます。各都道府県はこれまでもどの地域でどれだけ優良農地を確保するかということを定めておられましたけれども、今回この国の指針を踏まえまして、各都道府県におかれましても必要に応じて農用地の面積を明らかにしていくことが私どもは望ましいと思っておりますし、またそのような方向での対応を期待したいと考えておるわけでございます。 国の責務である食料の安定供給とそれぞれ都道府県知事が定める優良農地の面積との間にそごが生じますと国としての責任も果たせませんので、分権としての国と県の協議にはなっておりますけれども、それについて国が必要な指示をできるという規定を盛り込ませていただいたのはそういう趣旨からでございます。 ○佐藤昭郎君 今、この委員部からいただいた資料なんかも拝見いたしますと、農地面積が四百九十一万ヘクタールまで落ちて、農振農用地の面積は四百三十五万まで落ちてきていると。これにひとつ歯どめをかけて、しかも各県が定められる基本方針で農地の確保に関する事項を定めていく、これはこれから非常に難しい作業が予測されると思います。また、国とのすり合わせというのも非常に大きな作業になってくると思います。いずれにしても、この基本法の自給率と同様に来年の三月三十一日まで、今年度までにこれをお定めになるということになるわけでございますね。しかし、その大変な作業があるというふうに僕は思っております。 考えてみますと、農地として土地を利用する場合と、都市的に利用する場合というのは上がる収益が全然違うわけですね。したがいまして、農業サイドとして土地利用をある程度確保していこうとするときには、本当に地域や農業者の方々にとってインセンティブが必要だと僕は思うんです。そうしないと、ここに書かれた確保についても、指針についても絵にかいたもちになるおそれがある。ここら辺、農業サイドの土地利用に対するインセンティブといいますか、確保していくインセンティブ、こういった面についてどのようにお考えになっているのか、伺いたいと思います。 ○政府委員(渡辺好明君) 農振農用地区域内の優良農地というのは基本的に集団的農地、それから農業生産基盤整備事業、圃場整備等をやった非常に生産力の高い農地ということになります。したがいまして、この地域内では農業を継続してやり、かつ高い生産性を持った農業をやるという意味で、この農用地区域内の農地に対しては集中的に農業投資をするということが一番だろうと思います。 それから、近年では、特に担い手、後継者がいないという事柄も問題になってきておりますので、そういった後継者が生活をしやすく、農業生産、農業経営活動をしやすくするような、そういうふうな工夫も今回はさせていただいております。 具体的に申し上げますと、市町村の農業振興地域整備計画の中で内容を拡充いたしまして、農用地等の保全に関する事項とあわせて、新たに担い手のための技術の習得であるとか情報提供等々、そういった関連施設の整備をするための事項を盛り込むということも考えさせていただいております。面的な投資のほかに人的なインセンティブも与えていこうということでございます。 ○佐藤昭郎君 さて次は、やはり今回の改正の僕はある点では目玉じゃないかと大変期待したところ、この第八条の市町村の定める地域整備計画、これについて少し伺っていきたいと思います。 先ほどの地方分権推進法の関係で、県知事に対する協議、認可が協議になったというような改正もあったわけでございますが、基本法なり、それから木村尚三郎先生が座長になられました基本問題調査会、ここら辺でも美しく住みよい農村空間の創造のための総合的整備、こういったものをやっていくんだ、こう理念がうたわれたわけでございます。 これが今回、市町村の定める整備計画、この改正の中で、具体的にどんなところが変わったんだという点がちょっとわかりづらいと思うんです。その点、わかりやすくひとつ説明していただきたいと思います。 ○政府委員(渡辺好明君) 考え方の問題と、それから具体的に何をやるかということと二つあるわけです。 考え方の問題としては、地方分権の中で上から下といいますか、中央と地方というふうな上意下達型ではなくて、国と都道府県、市町村が同等の関係にあるというふうに整備をさせていただきました。もちろん、先ほどのように、国の責務との関係で一部同意つきの協議であるとか、指示とかいうことも含まれておりますけれども、基本的には我が町、我が村をどうするかということについては、一番現場に近い市町村や都道府県が具体的な運用を行えるようにするという点でございます。 それからもう一つは、具体的な整備の中身として、先ほどの説明と重複をいたしますけれども、農用地等の保全に関する事項とあわせて、新たに担い手確保の一環として技術の習得、例えば研修施設あるいは集会をするようなものとか、あるいはさらには情報を発信し受信するようなそういった基盤、そういうものを農業を担うべき者の育成及び確保のための施設という形で、市町村の計画の中に位置づけをするということでございます。 こういった施設は、新しい基本法の五条の農村の振興の観点から非常に重要なものの一つでございまして、今回の改正による計画事項の拡充というのは、こういう点で農村の整備に考え方の面でも具体的な項目の面でも寄与できるのではないかというふうに考えております。 ○佐藤昭郎君 今、局長さんの方から御説明があったんですが、私はそれは非常に有効である、有意義であるとは思うんですけれども、これは私の希望あるいは将来の姿でございますけれども、二十一世紀に向けて大きく中央省庁の組織も変わりますし、この農業基本法を初めとして四十年ぶりの大改革、この中でもう少し積極的な形が農村地域の土地利用の中にできなかったのかなという感じがいたします。 もう御案内だと思いますけれども、例えば西ドイツでは、一九七六年ですからもう二十年以上も前でございますが、農地整備法を改正いたしまして、集落の整備、住宅用地も含めまして集落の再整備についてこの農地整備法の中で計画を制定していって、それから集中効果といいますか、この農地整備法の中で、農村地域の都市的な土地利用なり河川や道路についての計画もその所管する省庁と協議した後その計画の中に一緒に入れてしまって、その市町村の整備計画が成立したと同時に、それら関連法案のいろんな規制も集中して同時に発効するというような非常に画期的な法律改正、これを二十年前になさったわけです。 やはり、日本の場合、どうしても各省庁の所管の所掌事務というのがございまして、この点非常に市町村にとっては使いづらい体系になっておるわけでございますが、将来の課題として農村地域の土地利用計画、ここはひとつ農林水産省がある意味ではイニシアチブを持って取り組んでいっていただきたいと、こう思います。これは局長がうなずいておられますので、そのとおりだということだと思いますので、答弁は結構でございます。 さて次に、農水省がここをやるべきだ、農村地域の土地利用についてもっと積極的にやるべきだということを申し上げるバックグラウンドについて少し御説明したいんですけれども、これは何といっても具体的な土地利用の調整、整序化を実現するツールである圃場整備事業を持っているということだと思うんです。この農振法なり国土利用計画法、法律の上ではいろんなことが書いてありますけれども、実際に地面に、地べたに落としていったときにどれだけのことができるかということになりますと、具体的なハード事業が行われて、それを契機に土地利用を整序化していくしか道がないと思うんですね。 都市計画法では都市区画整理事業というのを都市計画の母と言っておりますけれども、圃場整備事業というのはまさに農村地域の土地利用の母だと僕は思うんです。圃場整備事業というものに対していろいろ公共事業批判というのもございまして、米が余っているときに水田整備するのは何事だというようないわれのない、実は米も食料も大事なんですけれども、批判があるんですけれども、本当に大きな圃場整備事業の効用というのは農村地域の土地利用の整序化だと思うんです。 そこで、これまでにも換地の手法を活用されまして、例えば公共用地でありますとか、そのほかいろんな非農用地を創出してきた事例が僕は非常に圃場整備でもたくさんあると思うんです。ここでひとつ具体的な数値、どれぐらいのことを圃場整備事業でこういったことをなさってきていただいたのか、国民の方々でわからない方も多いと思うんです。ちょっと御説明していただきたいと思います。 ○政府委員(渡辺好明君) 御指摘のとおりでありまして、土地利用の整序のためのツールをいわゆる圃場整備事業等が、土地改良事業が持っているということはそのとおりでございます。土地改良事業を実施する場合、換地という手法をとって非農用地を生み出すわけでございますけれども、その結果、土地改良施設用地あるいはライスセンター等の農業経営の合理化のための施設用地あるいは道路、河川等の公共施設用地、宅地等が生まれてくるわけでございます。 昭和四十七年にこの制度が創設をされまして以来、平成十年度末で、これは都道府県営事業実施地区で見ますと、累計で約一万ヘクタールの非農用地が創設をされております。このうち公共施設等の用地が六割、宅地等が二割、土地改良施設用地が一割、そして農業経営の合理化施設用地が一割ということで、いわゆる創設換地のシステムを使いまして、農地の虫食い的なスプロールを防止しながら必要な用地を生み出しているというのが現状でございます。 ○佐藤昭郎君 我が国の国土の特徴を考えますと、このツールの重要性というのは今後もますます大事になってくるんじゃないかと思います。 御案内だと思うんですけれども、人口密度は我が国は今三百三十人平方キロ、オランダは四百十人ということですけれども、日本の場合、国土の二割しか可住地域ではない。したがいまして、平野部、可住地域、ここの人口密度というのは千五百三十人という数値が出ていまして、これは先進諸国と比べますと飛び抜けて高い人口密度の中でいろんな土地利用が錯綜しているわけでございます。したがって、具体的にこういった土地利用の整序化を生み出すツールという面での圃場整備事業というのは僕は非常に大事だと思うんです。 ただ、御案内のように、整備率が五割を上がってまいりますと、なかなか農業生産の場だけから見た圃場整備事業というのは仕組みにくい。やはり、都市の近郷でも、再整備を行って都市近郷の都市的土地需要に対して調整していこうという動きがいろいろあるわけでございますが、この再整備を中心とした圃場整備、土地利用の整序化を目的の一つにした圃場整備がやりやすくなるような仕組みというのは何かお考えでございましょうか。 ○政府委員(渡辺好明君) 圃場整備事業をやった後、またさらに一定の時間がたち、一定の必要が生じ、あるいは農業生産性がより一層増すと、例えば三十アール区画のところをまた一ヘクタールにするというふうなことも含めまして、圃場整備事業の再編整備を現在も行っております。例えば、土地利用秩序形成型事業であるとか、あるいは緑農住区というふうなものもございますし、再編地区においても、今申し上げましたような換地手法等を活用しながら地域のニーズに基づいた土地利用調整が円滑に図られるように今後も進めていきたいと思っております。 ○佐藤昭郎君 最後でございますけれども、この農振法の改正、先ほど申し上げましたように、我が国の土地利用の調整、計画という点から見て大変大事な法律だと思います。今回の法律改正は将来二十一世紀をにらんだ第一歩と、一歩と言うのはちょっと失礼かもしれません。これからもやはりこの延長線上には我が国の土地利用全体の整序化をどうやってつくり上げていくかというビジョンがあるわけでございますので、それに向かってのステップだというふうに考えております。ひとつこれからもその点をお考えの上、またよろしく取り組んでいただきたい、このように思います。 終わります。 |